2008年度佐賀大学公開講座 『素粒子の世界への誘い』 --2008年ノーベル物理学賞とその周辺--
本年のノーベル物理学賞は南部陽一郎、小林誠、
益川敏英の3氏が授賞されました。そこでこのたび
佐賀大学では、高校生以上の一般の方々を対象に、
本学の専門の研究者による今回の授賞内容に関する
易しい解説や、当時の研究室のエピソードを含めた
講演会を開催します。本講座を通じてできるかぎり
多くの方々に、今回の素晴らしい業績とともに、
素粒子の世界の面白さをお伝えできればと思います。
ポスターを見る 講演題目 (講演題目をクリックすると講演概要が読めます。消すときは、もう一度クリックしてください)
現在、宇宙は膨張しており、ずっと昔は高温高密度であったと考えられています。
いわゆる「ビッグバン宇宙論」です。この理論では、空間が膨張し冷えて行く過程
で、自然に物質が生まれ、それをもとに星や銀河ができて、現在の宇宙になったと
考えられています。ただ、宇宙のごく初期に、現在の宇宙に物質が存在するための
「からくり」がある必要があります。宇宙初期は、非常に高温であるので、原子核
でさえもバラバラになっており、その様子を考えるには素粒子論が必要です。従っ
て、この「からくり」も素粒子論の中にあるはずです。
船久保公一(佐賀大理工学部 教授) 私の講演では、現在の宇宙から宇宙の初期を振り返り、物理学、特にミクロな世界 の物理学が大切な役割をしていたことを説明します。現在私たちが知っているミク ロな世界の物理法則は素粒子の標準理論と呼ばれています。この理論とはどんなも のか、その理論で今年度のノーベル賞の対象となった業績が果たす役割、宇宙との 関係についてお話しします。
益川さんは天才的に数学ができた。小林さんは非常な秀才であった。
しかし、それだけで小林・益川理論が可能になったのではない。益川さんに
課題意識を与え、益川さんと小林さんが緊密に議論をするようにさせる
研究者集団の力があった。
近藤弘樹(佐賀大 名誉教授 素粒子の世界を明らかにしたいという共通の願いの上で、世界の最先端の 理論と実験の研究成果を、常に、迅速に集め、報告し合い、分析し、 自分たちの頭で再構成していく。自分が知ったこと、考えたことを、 情熱的に、率直に、また自由闊達に議論する。素粒子分野の研究の方向を、 それぞれの個性を持ちながらも、共有し考えていく、そう言った研究者集団が E研にあった。その教祖を辿れば、我々の世代から見れば、坂田昌一先生になる。 そうしたE研の中で益川さんは若手のリーダーであり、教祖の思想を 最も実践した1人である。 益川さん、小林さんと同じ研究室で、共同研究を行いつつ一緒に過ごして育ち、 当時の素粒子論研究者の中で、益川さん、小林さんに一番近かった研究者として E研を振り返ってみたい。 佐賀大学高等教育開発センター 特任教授)
この自然界には様々の一定に保たれる物理的な量があり、それが一定の値を
保つことを保存則と言います。例えば、私達に最もなじみが深いエネルギーは、
無からエネルギーを作り出すことはできないように、形を変えますがその量は
変化しません。これをエネルギー保存則と呼んでいます。これらの保存則の背後
には、自然の基本的な物理法則がもつ対称性があります。例えば、エネルギー
保存則は、時間経過にともなって物理法則が変化しないという、時間の変化に
対する対称性に由来します。ところが、一方で自然は、必ずしも完全な対称性
ではなく、少し破れがある方を好む場合があります。
米山博志(佐賀大理工学部 教授) 本講座では、このような 対称性の考え方と対称性の破れについて紹介し、今回のノーベル賞報道で何度も 耳にした「自発的対称性の破れ」についてお話しします。さらに、この自発的 対称性の破れの考え方が、どのように南部陽一郎氏によって素粒子物理学の中に 導入され、重要な役割を果たすようになったかを簡単に紹介します。
KEK−Bファクトリー Belle国際共同実験は、CP対称性の破れの機構
を探求することを中心課題として、日本の実験研究者がイニシアチブを
取って世界に共同研究を呼びかけて結成された実験プロジェクトです。
小林・益川理論の実験的検証に成功し、今回の授賞の大きな後押しに
なりました。その後も既存の枠組みを越える発見を目指して、研究が
続いています。
鈴木史郎(佐賀大理工学部 教授) 今回は、CP対称性の破れの実験での検証を可能にした加速器・測定 器の役割について、理論の検証に当たって何に着目したか、そのため には何が必要とされ、それをどのように実現して結果を出していったか についてお話しし、将来にわたっての素粒子研究における実験の重要性 を述べたいと思います。 日時 2008年12月13日(土曜日) 午後2時〜午後5時 (休憩を含む) 場所 佐賀大学理工学部6号館1階大講義室 参加費 無料 申込先 佐賀大学総務部総務課 電話 0952-28-8390 FAX 0952-28-8118 *氏名・住所・連絡先をおしらせください。 問い合わせ:0952-28-8539 主催:佐賀大学理工学部物理科学科 共催:佐賀大学高等教育開発センター |